徹夏お正月小説の第2夜うpりましたー!
これで完結です♪
「夏野ー!」
しんしんと静まり返った空気に包まれた夜――元旦も終わりに近づこうとしていた頃、夏野の部屋の窓の外から聞こえた、夏野を呼ぶ声。
「徹ちゃん?」
窓をガラリと開け遣ると、そこにはふわりとした笑みを浮かべた徹が、ダウンジャケットに身を包み、ひらひらと手を振って立っている。
「さっき、お重返した。ありがとな、お節。うまかったよ」
「そう‥‥で?どうしてわざわざこっちに?」
夏野が怪訝そうな表情で首を傾げると、徹は屈託のない笑みを浮かべて、体の後ろに隠していたビニール袋を夏野に差し出した。
「‥‥ミカン?」
「たくさんあるから、お節のお礼に持ってきた」
「重箱返しにきたなら、その時親に渡してくれれば良かったのに‥」
「いや、梓さんには渡した。これは、夏野のぶんだよ」
俺のぶん?とまた首を傾げてから、夏野は小さなビニール袋を受け取る。コンビニでもらうような、ペットボトルが1本入るぐらいの大きさの袋に、ミカンが3つぐらい入っているだけ。両親にお裾分けのミカンを渡したなら、夏野も食べるから、わざわざ分けて渡す必要もないのに‥と思いながらも、こうして部屋の方までまわって来てくれて、夏野のぶんと取り分けたミカンを手渡してくれたことに、特別感のようなものを感じて、夏野は無意識のうちに広角が上がるのを感じた。
「‥‥上げって、くか‥?」
「‥ありがとう。でも、今日は、これ届けにきただけだから」
昨日の夏野と同じように、徹は届けるものを手渡しただけで、ひらひらと手を振って風のように去っていった。
「‥‥なんだよ、これ‥」
渡されたビニール袋の中には、いびつな形をしたミカンと、小さな紙切れがひとつ。
『ハートの稲荷うまかった。ありがとう夏野。正月明けたら二人でこたつミカンしような!』
ミカンの皮にマジックペンで描かれたハートに目がとまって、夏野はクスリと笑って頬を染めた。
手にしたミカンから、こたつでぬくもる徹の温かさが伝わってくるような気がした。
ほのぼの‥っていうか、お互いの気持ちが恋かどうか分からないけど、
そういう淡くて輪郭のぼやけた可愛らしい感情のやりとりを描けたらなぁと思って書きました。
そういえば徹夏小説ってちゃんと書いたの初めてだ!
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